三十五反のことをさらに調べたいと思い、この本を購入した。
「別冊東北学5 特集:壁を超える(2003年)」
この号に「追悼 櫻井清助」という記事があるのを知り、取り寄せたのである。
記事を書いた人は黒田大介という方で、90年代に櫻井氏の布施辰治研究を手伝っておられたらしい。櫻井氏と密接に関わって来られただけあって、氏の詳細な経歴を文章に綴っておられた。
以下、前回私が書いた記事に関して修正が必要な箇所のみ取り上げておきたい。
櫻井清助氏は昭和8年に鳴瀬町で誕生した。新制ほやほやの石巻高校を中退している。その後の確かな経歴は不明であるものの、昭和26年に石巻を飛び出している。
最初は千葉県にある叔父の仕事を手伝っていたようだが、やがて東京の山谷で日々の糧を稼ぐようになったそうである。
昭和56年に石巻に戻り古本屋を始める。三十五反という屋号は仙台の図南荘さんにつけてもらったとのこと。
※私は宮城県古書籍商組合の組合員なので、図南荘という古本屋はもちろん存じ上げているが、私が石巻に戻った時にはすでに休業状態だったようである。
やがて平成8年に病気で倒れ、この時に三十五反も閉業したそうだ。
およそ15年という短い営業期間だったわけである。
6年後の平成14年に69歳で亡くなられている。
櫻井氏が手掛けた布施辰治研究や、豪放磊落な生き様のことについては私は語る資格を持たない。
私は氏から古本屋の魂だけを(それも勝手に)受け継いだ。
心の中で師と仰ぐ古本屋は何人かいるが、櫻井氏もその一人として仰ぎつつ、この石巻で古本屋という火を灯し続けて行きたい。